民法改正を勉強してみた(成年年齢引き下げ)
「二十歳になったら大人だよ。」そう言われて育った世代です。
明治時代から約140年 民法で定められ脈々と伝えられてきたことですもの。
それがつい先日 4月1日から改正民法が施行され成年年齢が「18歳」に引き下げられました。
目的は
2016年に施行された選挙権年齢の引き下げとあわせて若者たちの積極的な社会参加を促すこと。
では、なぜ18歳なのでしょうか?
OECD(経済協力開発機構)加盟国38カ国のうち35カ国で成年年齢が18歳であることなど
成年年齢18歳が世界的な主流であることが背景にあるようです。
30数年前、20歳の誕生日がきたら「おとな」そう思っていた 私と違い
2022年4月1日になったら18歳も19歳もみんな「おとな」
みんないっぺんに大人になってしまった皆さんは、どんな心境なのでしょうか?
認識はあるけど実感が湧かないってのが本音なんじゃないかな。
次に、成年になると何が変わるのでしょうか?
民法で定める成年年齢は、次の2つの意味があります。
① 一人で契約することができる年齢
② 父母の親権に服さなくなる年齢
つまりスマホの契約や一人暮らしの部屋の賃貸借契約を結ぶこと。
クレジットカードを作ること、車を買う時にローンを組むこと等々親の同意なしに
自分ひとりでできるようになります。
未成年が親の同意なしに結んだ契約は取り消すことができましたが
今後は18歳以上は成年に達しているということで取り消しができなくなります。
トラブル回避を目的に貸金業界では、18歳、19歳には貸し付けないなどの
自主規制をすすめているそうです。
しかし、知識不足などから思わぬトラブルに巻き込まれる可能性がありますので
十分に注意が必要です。
一方、20歳のまま変わらないこともあります。
公営競技(競馬、競輪、オートレース、競艇)の年齢制限や飲酒・喫煙。
これらは、健康面への影響や非行防止、青少年保護の観点から、従来の年齢要件を
維持するとされています。
詳しくは、法務省「民法改正 成年年齢の引き下げ」をご覧下さい。
https://www.moj.go.jp/content/001300586.pdf
それでは、労務管理上注意することはあるのでしょうか?
成年年齢が18歳に引き下げられても新成人となる労働者(18歳以上20歳未満)の
働き方に変更点はないと考えられます。
それは、労働基準法においては広い意味での未成年者保護といった観点ではなく未成年者をさらに
児童、年少者と区分して主に18歳未満のもに対する保護規制に重点がおかれているからです。
①児 童:満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでのもの
②年少者:満15歳に達した日以後の最初の3月31日が経過したもので18歳未満のもの
それぞれへの保護規制は下のURLでご確認ください。
厚生労働省「年少者使用の際の留意点」
https://jsite.mhlw.go.jp/tochigi-roudoukyoku/library/tochigi-roudoukyoku/hourei/kantoku/nensyou.pdf
労働基準法において、未成年者(18歳以上20歳未満)といった区分でひとつ注意点があります。
それは契約解除権に関する規定です。
労働基準法第58条2項
「親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認められる場合に
おいては、将来に向かってこれを解除することができる」
労働契約も契約の一種です。親権者等による契約解除権が定められています。
国会では18歳、19歳のアダルトビデオの出演契約の取消しについて議論がかわされている
ようですが、ちょっとしたアルバイト契約などでも今回の民法改正により18歳以上で成年といった
観点で契約解除権が廃止され不利な契約がされないように注意が必要です。
最後に
今回の、改正民法「成年年齢引き下げ」において労務管理上大きな変更点はありません。
変更点はありませんが、皆さんの事業所で働く新成人たちが思わぬトラブルに巻き込まれ
ないように「おとな」の先輩として私たちがしっかりとフォローすることが大切なのでは
ないでしょうか。
トラブルに巻き込まれてしまったら 仕事のパフォーマンスが落ちるばかりではなく健康を害して
働けなくなってしまうリスクも考えられます。
若者は、事業所にとっても社会にとっても大切な財産です。
悪質な業者は、未成年取消権がなくなるタイミングを狙って手ぐすねを引いています。
そんな悪質業者に私たちの大切な財産を奪われないようにするためにも今回の改正を機会に
「パーソナル・ファイナンス」といった観点からの従業員教育を考えてみてはいかがでしょうか。