2022-04-10 10:00:00

本採用への登竜門(試用期間)

毎年、この時期に新入社員向けに就業規則などを取り上げて

「働くためのワークルール」というテーマで研修をします。

 

会社のルールは就業規則で定められていて これが皆さんの労働契約の

内容なんですよ なんて話すわけですが 面白いわけないですよ。

 

なので 飽きてきた頃を見計らって「お金」の話をします。

お金の話は、男女問わず 関心が高いので 給与明細、昇給・昇格の説明にあわせて

資産形成のお話をするわけです。

 

「老後2000万円問題」って本当かな?

年金って40年働いて どのくらいもらえるんだろうね?

女性の二人に一人 男性の四人に一人は 90歳まで生きるらしいよ。

だから長生きもリスクとして考えて「健康づくり」と「資産形成」は

今からきちんと考えておかないとダメなんだよ なんて具合に

 

なんせ 講義中に 寝られないように工夫するのが大変なんです( ̄∇ ̄)

 

さて 新卒採用にしろ 中途採用にしろ 「試用期間」を定めている事業所様も多いのでは

ないでしょうか?

 

試用期間を設けることは、法律に定められていることではありませんので会社の裁量により

設定することができます。

試用期間の定めがある場合は、募集の時点で労働条件として明示をする必要がありますよね。

 

 試用期間は、「従業員としての適性を判定するために試しに使用する期間」と定義することが

できます。

①応募の経歴等に偽りはないか 

②仕事をする能力は十分か 

 ③勤務態度は誠実か    等々 採用面接では見えなかった部分を判定する訳です。

 

つまり、試用期間中の契約は、「解約権留保付労働契約」となり 問題があれば会社は、

解約権を行使するわけです。

 

冒頭の新入社員の研修の際にも あなたたちは現在「試用期間」ですからねって

試用期間に関する就業規則の内容と試用期間の意義を説明して緊張感を持たせるわけです。

 

但し、注必要です。

 

解約権留保付といっても労働契約を結んでいるわけですから 従業員は試用期間中も

労働基準法等の保護を受けることとなります。

 

また、試用期間中でも要件に該当するなら、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険の

資格取得する必要があります。

 

よく社会保険の適用は、試用期間が終わってからって聞くことがありますが 

それは間違いですから 注意が必要です。

試用期間中といえども要件に該当するのであればきちんと資格取得の手続きを

するようにしましょう。

 

次に試用期間の長さについてです。

 

これについても特に定めがありません。会社の裁量となります。

 

但し、試用期間は労働者にとって身分が不安定な期間となりますので

あまりにも長期の設定は望ましくありません。3ヶ月から長くても6ヶ月の設定が

一般的といわれています。

 

あまりにも長期に設定すると「公序良俗違反」で無効(民法90条)と

なりかねませんので注意してください。

 

また、就業規則に試用期間の「延長」の定めがされている場合は延長が可能となります。

定めがない場合は、実質難しいと考えられます。

慣行として延長している、労働者の同意を得ているなど 延長事由になり得ますが

争いとなる可能性があります。

また、定めがある場合であっても延長をする合理的な理由が必要となります。

先ほども書きましたが試用期間中は労働者の身分が不安定になります。

会社の都合だけで安易に延長をする事がないようにしなければなりません。

 

それでは、試用期間中の勤務態度等の判定結果、解約権を行使して本採用の拒否を

することは、可能なのでしょうか?

 

過去の判例をみると

本採用拒否が認められたケース、認められなかったケースがあり必ずしも解約権の行使が

認められるとは限らないようです。

 

※試用期間の法的性質については、三菱樹脂事件(最大判昭和48.12.12)の判例を

 ご確認ください。

 

会社が解約権を行使するには、採用後の勤務状況等の観察により、採用前には知り得なかった

事実を知り引き続き雇用する適格性を欠いている事を具体的に示さなければなりません。

そしてその判断が客観的に合理的である必要があります。

 

教育訓練を受け、経験を積むことによって一人前として活躍できるのであれば

 適性や能力が欠如している事を理由に軽々しく本採用を拒否するのは望ましくありません。

 

労働者がただ仕事をする能力がない、勤務態度が悪いだけでは本採用拒否は難しいでしょう。

 

能力が発揮できるように教育訓練をする事。

勤務態度が適切なものになるよう指導をする事。

 

これらは雇入れた事業主の責任です。

 

こういった教育訓練・指導をしても改善がされないのであれば本採用拒否もあり得るということを

明確にしておくことが必要となります。

 

また、新卒採用と違って中途採用の場合は、即戦力としての能力値を基準として採用している

のではないでしょうか。その場合、その能力値を明確にしておくことも忘れてはいけません。

 

適切な教育訓練・指導、明確な基準なしに 能力不足や勤務不良を主張することはできないのです。

 

 人の採用にもコストがかかっています。

そのコストを無駄にしないためにも 新卒採用、中途採用共に教育・訓練ができる研修制度を

構築をしておくことが重要となるのではないでしょうか。

まずはOJTをしっかりし下さい。