2022-04-17 10:00:00

収入の壁とは(社会保険の適用拡大)

大学生がいるお宅では そろそろ今年度の学費の請求がきているのでは?

春は何かとお金がかかります。

あ~ 頭が痛い・・・・・・

 

家計が苦しくなると どうやって収入が増やすかと考えます。

その時 パート収入を増やそうかな なんて考えるのではないでしょうか。

 

人事部門、特に給与関係の担当をしていると 従業員から 次の様な質問をされることが

あるのではないでしょうか。

 

「うちの妻が4月からパートをはじめたんですが 扶養内だったらいくらまで稼げますか?」

 

あるいは、従業員の配偶者さん自らが電話をかけてきて 

 

「主人じゃ話にならないので直接電話しました。

                 わたし パートでいくらまで稼いでいいですか?」

 

「いやいやいや お勤め先に人事担当に聞いて下さいよ。」(心の叫び)

 

配偶者の収入と扶養の範囲を考えたとき「収入の壁」という言葉を聞きます。

 

収入の壁には、100万円の壁、103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、

150万円の壁、201万円の壁 があると言われます。

 

意外に多いんです。

 

扶養の範囲というと ①税金(所得税、住民税)②社会保険(健康保険、年金)の 2つの観点が

考えられます。

 

今回は、下の配偶者A、B夫婦を例にして社会保険の「106万円の壁」と「130万円の壁」

について取り上げます。

(税金の「収入の壁」はあらためて取り上げます。)

 

配偶者A:正社員、全国健康保険協会加入の事業所に勤務。

配偶者B:パートタイマー 年収90万円  税金、社会保険ともに配偶者の被扶養者。

     この春から労働時間を増やして収入を増やそうと考えている。

 

まずは、パート、アルバイトの社会保険の適用要件です。

 

パート、アルバイトでも事業所と常時使用関係にある場合は、下の要件を満たせば

社会保険の被保険者となる事ができます。

 

1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数がその事業所の通常の労働者の

「4分の3以上」であること。

 

つまり、1日の所定労働時間が8時間の事業所で1日6時間以上の所定労働時間で勤務すると

社会保険が適用されるのです。

 

これを「4分の3基準」といいます。

 

配偶者Bが勤めるパート先の通常の労働者の1日の所定労働時間が8時間の場合、1日6時間、

週5日の雇用契約をすれば社会保険が(強制)適用されます。

1日5時間の契約をすれば勤める事業所で社会保険の適用はされません。

また、配偶者Bの年収が130万円未満である場合は、配偶者Aが加入している社会保険の

被扶養者となることができるのです。

つまり、1日5時間以内で年収130万未満に調整すれば配偶者Aの扶養内ということになります。

 

 これが「130万円の壁」と言われるものです。

 

年収が130万円未満であるといことは、配偶者Bにとっては国民健康保険料、国民年金保険料を

納付するしないの境界となるわけですから大変に意識されている「壁」という事ができるのでは

ないでしょうか。

 

次の「106万円」の壁です。

 

これは、「130万円の壁」を少しややこしくした「壁」と言うことができます。

 

法改正により平成28年10月1日から「4分の3基準」に満たない場合でも、次の要件を

すべて満たす場合は、社会保険を適用することとされたのです。

 

①1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること

②1ヶ月当たりの賃金が88,000円以上であること

③雇用期間の見込みが1年以上あること

④学生でないこと

⑤被保険者数がが常時501人以上の企業に勤めていること

 

会社の規模により社会保険の適用範囲が拡大されたのです。

 

そして、88,000円×12ヶ月=105万6000円 

 

つまりこれが「106万円」の壁となったのです。

 

配偶者Bが、1日5時間、年収130万円未満で調整しても、社会保険の被保険者が常時501人以上の

会社に勤めている場合は月に88,000円以上の収入があると社会保険の適用を受けることに

なるのです。

 

この「壁」の内容をご理解いただけると従業員の配偶者さんから

「わたしはいくらまで稼げますか?」と質問されてもお勤め先の規模、雇用契約の内容が

わからないわけですから「〇〇〇円までですよ」なんて不用意に答えられないことが

わかるのではないでしょうか。

 

この社会保険の適用は、今年以降さらに進められます。

 

2022年10月1日から  従業員数101人以上の企業

2024年10月1日から  従業員数 51人以上の企業

 

中小企業の事業所様にもじわじわと適用の範囲が拡大されていきますのでご注意下さい。

 

さらに適用の要件もマイナーチェンジされています。

 

①1週間当たりの所定労働時間が20時間以上であること

②1ヶ月当たりの賃金が88,000円以上であること

2ヶ月を超える雇用の見込みがあること

④学生でないこと

 

雇用見込みが1年以上から2ヶ月を超えると改正されれたことにより

短期アルバイトで3ヶ月間の雇用契約をした場合、これまでは社会保険の適用をする必要は

ありませんでしたが、上の①から④の要件をすべて満たせば適用する必要が発生するのです。

 

この点が今回の改正でもっとも注意を要する部分となると考えられます。

 

詳しくは、下のURLでご確認下さい。

厚生労働省からのお知らせ

https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/pdf/chirashi_jigyonushi.pdf

 

扶養の範囲ということにこだわり働いているパート、アルバイト従業員に

社会保険の強制適用の話をすると大半の方が拒否反応を示すのではないでしょうか。

社会保険の被保険者となることによって得られるメリット、健康保険加入による医療保険の充実、

厚生年金加入による年金が2階建てになることなどを丁寧に説明することが求められます。

 

また、社会保険の適用拡大は、事業所様にとっても社会保険料負担増のデメリットと

考えられます。コスト増という観点で適用要件に該当しないように雇用契約を締結して

労働時間管理しっかりとしていく必要があります。

あるいは、コスト増と捉えるのではなくこれを機会に助成金活用を視野に労働時間の延長や

正社員化などパート、アルバイトのさらなる活用、戦力化を検討してみることもできます。

 

それぞれの事業所様の現状や将来の事業計画を見据え法改正への対応準備をお願いします。

 

(参考)

「年収130万円の壁」と「年収106万円の壁」では、年収の考え方が少し違います。

130万円の場合は、残業代や賞与などすべての賃金が含まれます。

106万円の場合は、残業代や賞与は含まれません。

雇用契約の 時給〇〇〇〇円、1日〇時間、週〇日 で 月の賃金が88,000円以上を判定します。

だからといって雇用契約書の内容を88,000円未満に設定したらいいのでしょうか。

それは間違いとなります。

年金事務所の定期調査で、雇用契約書の内容と実態に乖離があれば強制適用と判定され

保険料を遡及して納付するよう命じられる可能性があります。

そうならない為にも雇用契約の内容と勤務の実態に乖離が出ないように管理することが重要です。